有機ELへの対抗馬「マイクロLED」





債務超過に陥っているジャパンディスプレイ(JDI)が、次世代ディスプレイの「micro LED」(マイクロLED)および「透明液晶」を開発しました。このうち「透明液晶」は87%という透過率が特徴で、2020年度の量産を目指します。

有機ELより劣化しない「micro LED」

JDIが開発した「micro LED」ディスプレイは1.6インチ 300 x 300解像度で、10インチ程度までの大型化が可能。1.6インチあたり27万個の微細LEDチップをLTPSバックプレーン上に敷き詰めることで、265ppiという高い画素密度を実現しています。

▲展示は1.6インチ(265ppi)だが、10インチ程度まで大型化可能

この「micro LED」は、ソニーも大型ビジョン向けに「CrystalDisplay」として製品化してしていますが、JDIのパネルは主に中小型向け。インチあたりの画素密度も高いため、スマートフォンなどのモバイル機器にも適用できる点が違いとなります。

既存のディスプレイと比較したメリットは「耐久性」そして「高輝度」です。有機ELの場合、画素に有機素材を採用しているため、空気に触れると容易に劣化します。こうした劣化に対処するため、既存の有機ELディスプレイは、有機ELを外気から空気する「封止層」を設けていますが、無機素材を採用する「micro LED」は封止層が不要。より過酷な環境下でも安定して利用できます。

輝度が3000cd / m2と、一般的な液晶ディスプレイの10倍に達するのも特徴。担当者は『直射日光に負けない表示を実現する』と語り、車載などを中心に用途を模索しています。スマートフォンへの搭載については『高い輝度を特徴としているので、その価値を受け入れてもらえるならありえる』(同)と語りました。


▲「高輝度」という特徴から車載ディスプレイへの採用を念頭に置くものの、スマホへの搭載も可能。微細LEDチップはシリコンバレーのglo社から調達


▲有機ELと異なり有機素材を使用しないため劣化に強い

なお、量産技術は確立しているものの、量産時期は未定。製造コストは液晶や有機ELなど、すでに確立しているパネル技術には及びません。低価格化には『マスへの普及が不可欠』としつつ、製造にあたり液晶などで使用している「LTPSバックプレーン」をそのまま流用できる点を挙げ、投資規模は『有機ELなどに比べて抑えられる』との認識を示しました。

透明液晶は20年度量産開始

もう1つのディスプレイが、12.3インチの透明液晶ディスプレイです。JDIは2017年に、従来の液晶ディスプレイに必要なカラーフィルターおよび、偏光板を取り除く技術を採用した4インチディスプレイを開発。今回はそれを大型化したものです。


▲写真では色狂いするが、実際は鮮明な表示


▲裏側から見ても透過している

透明ディスプレイは既に各メーカーが開発しており珍しいものではありませんが、JDI製は世界トップクラスの非表示時透過率87%を実現。解像度は1440 x 540。透明液晶は『美しい映像や画像をじっくり見る用途ではない』といい、最大表示職は4096色に抑えています。タッチ機能にも非対応です。

この透明液晶は2020年に量産予定。具体的なユースケースとしては、券売所などで職員と客を隔てる透明ガラスにおける情報表示などを想定しています。それ以外にも『未来感のある新しいディスプレイの使い方』を提案するとしています。

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▲未来感のあるディスプレイの使い方を提案するという

JDIは千葉県・茂原市においてApple Watch向けの有機ELディスプレイの製造を開始しています。それ以外にも「透明ディスプレイ」「micro LED」など次世代のディスプレイ技術を披露することで、技術力を誇示し再起を図りたい考えです。